食品品質プロフェッショナルズは その創設より ほぼ3年を迎えます。当初は食品部会と名乗り 大阪でのセミナーを皮切りに 折々の話題に自分たち独自の視点を加味した形で講演していたのですが、セミナーを繰り返すたびに 忌憚のない意見の交換の場に飢えている方々の多いことを実感いたしました。そのため 自然な形で 今でも セミナーは我々の活動の主要な柱として 位置付けられています。 2015年6月には 当時の一般社団登記準備委員会メンバーよりの公募で 食品品質プロフェッショナルズという団体名称に変更、皆様ご存知の 箸とフォークが盾の前に交差するロゴも直ちに出来上がりました。2016年4月に 晴れて一般社団法人となり 名実ともに 世間に信頼される団体としての地歩を固めました。背景で苦労なさった皆様のおかげですが 外目には順風満帆の発展として映っていることでしょう。
昨年 2016年には 大きな食中毒事件はなかったように報告されています。近年は 時折 腸管出血性大腸菌によって引き起こされる比較的大きなピークと 何もないような平穏な年が何年おきかに交替するという 山と谷の循環の中では 山でもなく谷でもなく 中間程度の年であったという印象でしょう。 しかし その陰では 某老人ホームでのO157による死亡事件、(食中毒ではないと除外されていますが)某病院での点滴薬への毒物混入による患者死亡事件 と とくに社会的な弱者と言われるクラスターが被害者となる事件が 相次いでいます。老人ホーム・病院への HACCP(および脆弱性分析)導入は遅々としており 今後も 給食業や看護従事者の低賃金・過重労働に代表されるような社会的なしわ寄せがそこに重層されている限り 事件の再発を免れないでしょう。
このような中 食品品質プロフェッショナルズは 社会全体へのHACCPの浸透に向けての舵を取り続けています。その目指すところは 高度化という名目のもとに ひたすら新しい装置を売り込んだり または すべてがソフトで解決できるはずと 現場の人間の負荷ばかりを高めたりと 両極端のどちらかに走るのではなく なにが危害要因となりうるのかを冷徹に分析し その危害要因に関しての有効な対策を優先する いわゆる 「いい塩梅」です。 無駄な投資もなく そこに働く人たちへの過剰な負荷もない ちょうどいいところを狙い続けています。これは事業者にとっては ビジネスの継続と発展に不可分の要素ですが、もう一点 食品安全が 公衆衛生問題であるという側面を強調すべきでしょう。ほかの衛生問題であってもその問題解消に当たっては 社会的な資本の投入量と それによってもたらされる効果が論じられます。社会として その問題にどう対応するか、その問題を解決することで得られるメリットは それにかかる社会的な負担をはるかに上回るものでなければならないという 真剣な議論がその根底にあります……別な言い方をしますと 社会が総体として幸福な方向に向かっていなければ HACCPなどやるメリットはないといえるでしょう。
今年も このようにHACCPを活動の中心に据えて 食品品質プロフェッショナルズは 走り続けていきます。皆様の変わらぬご支援をお願いいたします。
2017年1月 代表理事 広田 鉄磨