熱殺菌工学 レトルト、アセプティック、ホットパックでの妥当性確認・検証を中心に 後編【食品と科学】

熱殺菌工学 レトルト、アセプティック、ホットパックでの妥当性確認・検証を中心に 後編【食品と科学】

一般社団法人 食品品質プロフェッショナルズ代表理事の広田鉄磨が執筆した記事が、食品と科学 2019年12月号に掲載されました。月刊 食品と科学様の許可を得て、公開しております。

前編はこちらから。

冒頭紹介

アセプティックの妥当性確認・検証

アセプティックの妥当性確認の場合の第1の関門が、レトルトに比較すると、滅菌に採用する温度域での耐熱性データが少ないということです。対象菌のD値、z値は、計測したのは最高でも121℃ということが多く、アセプティックでの常用温度帯である140℃近辺では、データは非常に少なくなります。

したがって、数少ない121℃近辺でのデータを「無理やりに」140℃に外挿していく例が多くなります。さすがに外挿には無理があるという意識の反映として、安全率を高く設定することが通常です。さらに、食材が異なるものでのD値、z値の外挿となると、信頼性はがくんと落ちるため、安全率をさらに高く設定しがちです。また、UHTの場合、耐熱性芽胞のいわゆるロングテイル、つまり耐熱性の高い方向に尾を伸ばした分布を示す傾向が出てきやすいことが知られているので、安全係数をさらに高めに取り、耐熱性をこれでもかこれでもかと高めに見積もっていく傾向があります。

つまり、アセプティックではその妥当性確認において、芽胞の耐熱性が極端に高く見積もられていく傾向があるわけです。

第2の関門というべきものは、日本ではUHTのホールディングチューブ内部での流速を少なめに見積もる傾向があります。UHTを通過する食材は液体です。液体は温度が上がればかなり熱膨張しますが、日本では熱膨張指数をかけてホールディングチューブの長さの計算をしたという例を見たことがありません。また、ホールディングチューブの中を流れる際に液体は層流または乱流を形成します。層流の場合、中心部は平均流速の2倍程度の早さで流れていくため、FDAの指定するように、ホールディングチューブは流速から計算される必要容積の2倍ないといけないことになるのです。乱流であったとしても、最速部は平均流速の1.2倍程度は早く流れているので、ホールディングチューブは必要容積の1.2倍を確保しないといけないのです。

そして、日本でほとんど忘れ去られているものとして、製品中の溶存酸素があります。常温であれば酸素は製品に溶け込んだままですが、140℃にまで温度を持ち上げられると溶けこんだままでいることができず、気泡を発生します。この気泡の発生はホールディングチューブの有効容積を引き下げます。事前の脱気をよほど十分に行わない限り気泡の発生は避けられません。通常、受講者に伝えるのは「ホールディングチューブって、何もかも考慮すると最低でも、やはり3割程度の余裕は必要でしょうね」というのがいつもの私の説明ですが、これが日本では斬新に聞こえてしまうようです。

要は日本だけではなく世界中で熱殺菌の観点からは、芽胞の耐熱性を高めに見積もる傾向があります。また、日本及び他のUHTの技術的な理解が成熟していない国々では、ホールディングチューブの長さを過小に見積もる傾向があるわけです。ここで冗談をいえば、日本では芽胞の耐熱性を高く見積もりすぎているという第1の過誤が、ホールディングチューブの長さを過小に見積もるという第2の過誤で相殺されて、偶然いい結果を作り出しているとも言えるのではないでしょうか。

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