1年後には8割減 食品への毛髪混入の減らし方(後編)[食品と科学]

1年後には8割減 食品への毛髪混入の減らし方(後編)[食品と科学]

一般社団法人 食品品質プロフェッショナルズ会員の江川永が執筆した記事が、食品と科学 2022年6月号に掲載されました。月刊 食品と科学様の許可を得て、公開しております。

1年後には8割減 食品への毛髪混入の減らし方(前編)はこちらから

本文紹介

1年後には8割減 ~食品への毛髪混入の減らし方~ 後編

江川 永
Egawa Hisashi
(食品品質プロフェッショナルズ会員)

以前勤めていた食品工場では、流通に提出する報告書を仕上げることが第一で、再発防止は二の次でした。しかし心を入れ替え、製造委託先と一緒になって取り組んだところ、製造委託品の毛髪混入が19件/年 (2016.9~2017.8) だったのが 4件/年 (2017.9~2018.8)と前年の約8割を削減することができました。

前号では、「抜け毛を作業服に付着させて製造ラインまで持ち込んでいる」ことで毛髪混入が発生するパターンがほとんどであると推察されること、あれもこれも対策するより抜け毛を持ち込む経路が集まっている一点に力を集中させて対策するのが効率的であること、それぞれの毛髪混入防止対策は「①毛髪を付着させない環境作り」と「②毛髪を取り除く工程」の2種類に分類できること、をお伝えしました。

毛髪混入をHACCP的に捉えて管理手段を考える

HACCPでは危害要因分析をし、各工程に於ける管理手段を選択します。

かまぼこやちくわのような加熱する食品の場合、生物的危害要因を考えると、原料の受け入れ、冷蔵保管などはなるべく微生物を増殖させないようにするPRPで管理するのが一般的です。その原料を混ぜて加熱して包装冷却するので、微生物を許容レベルにまで低減させる加熱工程をCCPに設定しているところが一般的でしょう。

PRP(原料受け入れや原料の冷蔵保管)は厳格な管理をしなくてもある程度の管理をしていれば、後のCCP(加熱)で対処できます。

毛髪はHACCPで捉える物理的危害要因にはなりませんが、あえて危害要因と捉えた場合、それぞれの工程はどの管理手段を選択すればいいでしょうか?

やはり図6の「①毛髪を付着させない環境作り」は後の「②毛髪を取り除く工程」で対処できますので、PRPになるでしょう。「②毛髪を取り除く工程」のエアシャワーと粘着ローラーがけはどうでしょうか?

図6 毛髪を工程内に持ち込むに至るハードル

エアシャワーは毛髪を完全に吹き飛ばすことはできません。毛髪混入続きでネタ切れになったとき、「エアシャワーの時間を長くすれば毛髪混入が減らせるのではないか」とふと思いつきました。さっそく美容院から髪の毛をもらってきて、その髪の毛を作業服に付着させてエアシャワーをゆっくり通過してもらいました。しかし通過時間の長短にかかわらず、生地に接している毛髪は飛ばすことが出来ませんでした。この記事をご覧の皆様も、100円ショップのエクステを切って作業服に載せ、エアシャワーに入れば効果が確認できます。

また、カーペットに落ちた毛髪を掃除するにはどのような用具(写真2)を使えば効率的に取れるかを考えれば、自ずと答えは出るはずです。ドライヤー(エアシャワー)よりコロコロカーペット(粘着ローラー)のほうが確実に毛髪を取り除くことができます。よって粘着ローラーがけがCCP的に管理すべき工程となります。

しかし毛髪混入が多発している工場に行くと、どの工場も共通してこの粘着ローラーがけが穴だらけでスカスカなのです。危害要因を取り除く「②毛髪を取り除く工程」が穴だらけだと毛髪を作業服に付着させたまま工程に入っていくことになり、結果として毛髪混入は減りません。「①毛髪を付着させない環境作り」も大切ですが、何よりも「②毛髪を取り除く工程」、中でも最後の砦として粘着ローラーがけを厳格に管理することが毛髪混入対策の柱となります。

ドライヤー
(エアシャワー)
掃除機
(掃除機タイプの吸引機)
コロコロカーペット
(粘着ローラー)

写真2 カーペットに落ちた毛髪を取り除くのに適切な掃除道具は?

粘着ローラーのかわりの掃除機タイプの吸引機

粘着ローラーではなく掃除機型の吸引機を設置している工場もあります。帽子に毛髪を10本載せて吸引機を使ってみたところ、1本だけなかなかな取れませんでした。真上を通っているにもかかわらず吸い取れず、6往復させてやっと吸い取ることが出来ました。

吸引機は粘着ローラーより吸い込み口の幅が狭いので、効率がよくありません。そして吸い込み口の首も左右にしか曲がらないので作業服に沿わせにくく、使いにくいのが難点です。また、この吸引機で設定できる30秒や60秒で全身にくまなくかけることはできません。そもそもエアシャワー同様カーペットに落ちた毛髪の掃除を考えれば、掃除機よりコロコロカーペット(粘着ローラー)のほうが確実です(写真2)。

工場入場前の取り組みとして、「吸引機で毛髪を吸い取ってから工場に入場しています」とHPでアピールしている食品メーカーも見かけます。毛髪混入が多くて対策ネタが切れ、お客様に対策を報告するために経費を使って設備を入れたのかな? 「いっぱい毛髪混入出してごめん。でも対策にこれだけの金額を投資したから、流通さんこの辺で勘弁してよ~。」と言った背景があるのかも?と勝手に妄想しています。 吸引機はそれなりの金額ですので捨てるに捨てられず、なんとなく使い続けることになります。本気で毛髪混入を削減したいなら、吸引機をやめて今すぐ粘着ローラーに切り替えるべきです。毛髪混入対策の道具は金額の大小が削減効果を決めるのではありません。まずは効果的な道具を選択し、そして正しく使わなければ減りません。

ビデオで現状把握

今更言われなくても、粘着ローラーがけをしていない工場はないでしょう。しかし工場の作業者が、正しく丁寧に粘着ローラーがけをしているかまじまじと見て確認したことがある人は少ないと思います。

私がお勧めする方法は入口で粘着ローラーがけの様子のビデオを撮ることです。最近はフードディフェンス対策で監視カメラが設置されていますが、明らかに撮影していると作業者にわかる形でカメラを構えて録画しましょう。天井からではなく人の目線と同じ高さで撮影した方が見やすい動画が撮れます。

肉眼では、同時に複数の人が来ると全員を観察することができません。ビデオであれば巻き戻しができますので、一人ずつ粘着ローラーがけの様子を観察することができます。それに肉眼で見るのとモニターで見るのとでは印象が違って見えます。モニターを通してみると客観的に見ることができ、いろいろな細かいところが見えてくるのでお勧めです。

ビデオを撮るためにわざわざビデオカメラを新たに買う必要はありません。デジカメでも30分弱は撮れますし、スマホでも十分キレイに撮れます。

作業場の落下毛調査

複数の作業場の床を調べ、落ちている毛髪の本数をモニタリングしてくれるサービスがあります。虫のように作業場内で増える異物であれば、歩行トラップやライトトラップをモニタリングすることで発生源や侵入経路を突き止めるのに役立ちます。

しかし抜け毛が床の上で細胞分裂して増殖することはありません。結局はなぜそこまで毛髪が持ち込まれたのか、「抜け毛を取り除く工程で除去できていない原因」を調べる羽目になります。

毎回調査結果が出てから「○○作業場の落下毛が多いぞ! ○○作業場の従事者は注意するように!」と言うだけで毛髪混入が減るわけがありません。無駄な調査はやめ、「調べるべきはどこか」をよく見極めることが必要です。調べるべき場所は作業場の床ではありません。工場の入口です。

録画をしたら複数で見てみる

録画したら品証だけで確認するのではなく、製造の職場責任者たちとビデオを確認しましょう。多くの人の目で見ることで多角的に見ることができますし、なにより製造現場の人にも現状を知ってもらうことで話が早く進みます。主任など一般従業員に近いレベルの人も交え、ビデオを一緒に見ると盛り上がります。

コツは品証が「この人のここが悪い」など指摘をしないことです。ビデオを見たら、製造現場の人から自然と声が上がります。私が担当した製造委託先の責任者は、初めて現状をビデオで確認した時、例外なくショックを受けていました。「もっとできていると思っていた。」と言うのがその方達の感想です。そしてこれからどうしていきたいか、製造現場責任者達の間で議論が始まることが通常です。

もしなにも声が上がらなかったら、雰囲気が硬いために発言しにくく思っている可能性があります。「ビデオを見てどう思いましたか?」と話を振ってみてください。それでも声が上がらないなら「この作業者に注目してもう一度見てみましょう。」とか「この作業者の帽子の部分をもう一度見てみましょう。」と言って巻き戻し、見終わってから「どう感じました?」と聞いてみましょう。注目する範囲を限定することで話しやすくなって、製造現場ならではの気づきを語ってくれるはずです。

ビデオの判断は製造現場に任せる

製造委託先で粘着ローラーがけの録画を確認すると、「あ~ この人は前、○○社でお弁当作ってた人ですわ。やっぱり大手にいた人は結構きっちりやってますね。」「この人はベテランでずっと働いている人です。やっぱり長い間うちにいるベテランはできてないですね・・・」など、ビデオを見た人から製造現場の人にしか知らない情報がポンポン出てきました。

「うわ~ こいつこの部分当たってへんなぁ。」「肩かったいなぁ。明日からロボコップって呼んだろ。」「やっぱり腕は、この方向でかけるように統一しよっか。」などの声が上がることもありました。

その職場の人の方が品証より遙かに多くの情報を持っているので、ビデオの判断は製造現場に任せた方が良いと思った瞬間でした。品証の役割は指摘ではなく、製造現場の気づきを支援することです。撮影したものをみんなで見ることで材料を提供し、それに対するありのままの反応を引き出す役割に徹しましょう。

そうしていると今度は「この部位はこんな風にかけた方が上手くかけれるんとちゃうかな?」など建設的な声も製造から上がり始めます。

正しい粘着ローラーがけの手順

いろんなアイデアが出ると思いますが、ビデオを見た人の意見をまとめるとおそらく「統一された正しい粘着ローラーがけの手順を教える」に行き着くはずです。

しかし正しい粘着ローラーがけとはどういうかけ方なのか? いざ細かい点を追求していくとぼんやりしていて、人によって正しいと思っているかけ方にずれがあることに気づきます。

写真(イラスト)付き粘着ローラーがけマニュアルを掲示しているにもかかわらず、かけ方は責任者同士でも統一されていないのが実情です。文字や写真では細かい部分まで伝えきれません。なので作業者が正しく粘着ローラーがけできなくてある意味当たり前のことなのです。

動画には写真以上の情報が詰め込めます。そこで私は動画の粘着ローラーがけマニュアルを作成しました。全身を一気に覚えるには量が多すぎるので、私が作成した動画マニュアルでは全身を15の部位に分けました。毎週1部位ずつ確実に覚えていけば、3ヶ月程度で覚えられる計算です。

まず製造の職場責任者が動画マニュアルを見ながら正しい粘着ローラーがけを覚えます。そして覚えた部位を職場の作業者に、朝礼などで職場責任者が実演しながら説明します。毎日同じことを繰り返して教えます。説明が終わったら、作業者の誰かをランダムに当てて、その部位を実演してもらうと真剣に聞くようになります。

間違っても食堂や休憩室のテレビで動画マニュアルをループ再生して「おまえら見とけよ」、もしくは「作業の合間を見て、各自PCで動画を確認しておくように!」と指示して個人任せにしてはいけません。このような食品工場もありましたが、当然のことながら粘着ローラーのかけ方は各自バラバラで、毛髪混入は減りませんでした。

本気で毛髪混入を減らしたいなら、職場責任者が実演して教えることです。お金はかかりませんが、時間と手間と根気がかかります。しかしそれだけの価値はある対策です。今までこの方法を取り入れた食品工場でも最初は半信半疑でしたが、教育を始めてから2~3ヶ月経った頃に「なんかこの方法って効いているのかも?」と効果を実感しはじめています。

粘着ローラーがけもスキルの一つ

ライン作業を新人に教える時は、見本をやって見せて、新人にやってもらい、コツをつかめていなければ再度詳しく教え、ちゃんと作業ができるようになってから作業を任せているはずです。

しかし粘着ローラーがけは、配属初日に掲示されている写真(イラスト)付き粘着ローラーがけマニュアルを指さして「ここに貼ってある写真(イラスト)の通りにするように!」と言っただけで、あとは個人任せです。掲示マニュアルには細かいことは書いていませんから各自の我流で粘着ローラーがけをすることになります。

粘着ローラーがけもスキルの一つです。新人にライン作業を教えるように、細かくコツを教えていかなければなりません。一度に全部教えても覚えきれませんから、粘着ローラーがけも段階を追って少しずつ着実に覚えてもらえるように教えなければなりません。(図8)

図8 覚えられる量に分割して順番に教える

正しい粘着ローラーがけの検証

まずは現状把握のため録画をします。次にその動画を確認し、対策(=教育計画)を立てます。そして立てた対策に沿って教えていきます。これで図9が1巡します。

図9 粘着ローラーがけ教育の検証サイクル

一巡したら図9の2巡目に入りましょう。教え始めて1ヶ月くらいしたところで、再び入場の粘着ローラーがけの様子を録画します。そしてその動画を複数で確認します。

検証ビデオを見ながら質問してみる

ビデオを確認して「この人の帽子の横、全然かかっていません!」とか指摘をしたくなると思いますが、ここはぐっとこらえましょう。次のように製造の責任者に話しを促す問いかけをし、製造の責任者が気づきを語りはじめるのを待ちます。

  • 1ヶ月間教えてきてどうでしたか?
  • (ビデオを一緒に見ながら)この人の帽子の横のかけ方どう思いますか?
  • 先月と比べてどんなところが良くなっていましたか?
  • 教えるときにどんな点を工夫されましたか?
  • 教えたけど伝わっていないところはどの部分ですか?
  • 伝わらなかった部位で何か心当たりありますか?
  • 今週と来週はどこのかけ方を重点的に教えていこうと思いましたか?

全員教えたとおりにできている

特に新たな対策は必要ありません。当初の教育計画に沿って、次の部位の正しい粘着ローラーがけを教えていきましょう。

ほぼ全員教えたとおりにできている

一部の人ができていないので、個別講習をしましょう。単位が取れるように補講を開催するような感じです。

一部の人しかできていない

当初の教育計画通りに進むには無理があります。教育計画を見直し、もう一度できていない部位に戻って教育し直しましょう。

また、教え方が下手なのかも知れません。伝わるように話すにはどうすれば良いか、自分の話し方、表現の仕方を見直すことも必要かも知れません。

教育計画を見直した後は、その計画に沿って教育をしていきます。そして1ヶ月経ったらまた動画撮影し、その動画を確認し教育効果の検証をします。

毛髪混入のお申し出件数で検証しようとしても、1年後にならないと見えてこないものです。もちろん1年後にお申し出件数で検証もしますが、1年間待ってからでは次の対策が遅くなってしまいます。もっと速いサイクルで検証をしていかなければなりません。「毛髪混入のお申し出が少なくなったか」だけで検証するのではなく、「正しい粘着ローラーがけができているか」も検証することがポイントです。

我が社はたった1件しか毛髪クレーム出してません!

食品への毛髪混入の件数が少ないからと言って安心していてはいけません。混入していた毛髪の長さを確認しましょう。

食品への毛髪混入防止対策には粘着ローラーがけが最重要ポイントであることはお話ししました。では粘着ローラーで取り除きやすい毛髪はどのようなものでしょうか?

図10をご覧いただければわかるように、長い毛はどこか一部が引っかかれば取れてしまいます。しかし短い毛はその上をドンピシャで転がさないと取り除くことができません。

図10 矢印の短い毛を取り除くにはすき間無く粘着ローラーを転がすことが必要

と言うわけで長い毛の方が取れやすいわけです。ですから長い毛がお申し出として返ってくる工場は、粘着ローラーがけがかなり雑な作業者がいる工場です。

このような工場では何らかの理由で消費者からお申し出をいただいていないだけで、連絡をもらえていない毛髪混入が多発していることが推察されます。不満を訴えてもらえないサイレントクレームは、食品メーカーから消費者のもとへお詫びに伺うこともできず、改善の機会も得ることができません。ですので「たった1件しか発生していません」と胸を張って言うべきではありません。たくさん発生しているのに1件しか消費者から連絡いただけなかっただけです。

わざわざ教えてくださる消費者は食品メーカーにとって改善の機会を与えてくれる本当にありがたい存在です。しかしサイレントマジョリティーは企業の足下をすくいかねない存在となります。お申し出にならない声の存在も忘れてはなりません。

混入毛髪の長さ分布

3年間で受け付けたお申し出の毛髪の長さの分布を調べました(図11)。7.0cm未満の毛髪が全体の6割、12.0cm未満が9割を占めていました。

ちなみに件数が最も多かったのは3.0~3.9cmの毛髪でした。3cmくらいの幅のかけ残しが出る粘着ローラーのかけ方をしている作業者が多いのだろうと思われます。

図11 混入していた毛髪の長さ分布(2005年1月~2008年4月受付分)

初日に新人へ教えるべき粘着ローラーがけのポイント

粘着ローラーがけを1日で全部教えることはボリュームが大きすぎて無理です。かと言って全く教えないというのも困ります。いろいろな工場を見てきた経験から、初日に新人へ教えるべきポイントは次の点です。

  • 上から順にかける
  • 帽子の周囲
  • 首回り
  • 肘から先

上から順にかける

かける順番を教えましょう。上から順番にかけるのが基本です。下からかけて、折角粘着ローラーを転がした部位に上から毛髪が落下してきては意味がありません。

帽子の周囲

マスクをかけるための耳かけが付いている帽子によくあるパターンです。耳かけに粘着ローラーが当たると下までかけたつもりになるようです。意識して耳かけより下(図12)にも粘着ローラーを転がすようにしなければなりません。

図12 耳かけから下はかけ忘れが多い

首回り

首はへこんでいるので、粘着ローラーを勢いよく転がすと凹みに粘着ローラーが当たりません(図13)。凹みに当たるように意識して粘着ローラーを転がしましょう。

図13 勢いよく転がすと首の凹みに当たらない

肘から先

マジンガーZのロケットパンチの部分です。肩から肘まではかけるのですが、肘から先(図14)に転がさない人が結構います。袖口まで粘着ローラーを転がすには、意識して転がさないとなかなか難しいようです。

袖先は食品に一番近い部分です(写真3)。ここに抜け毛を付着させたまま製造ラインに入ると、食品への毛髪混入が起きやすい非常に危険な状態であることがわかると思います。

ある原料の工場では、作業者が作業場に入ってきたらリーダーが袖先を粘着ローラーがけするようにしました。すると毛髪混入がかなり減ったことがあります。

また加熱工程があり作業室内が暑い工場では、半袖の作業服で働いています。そこの工場責任者の方は「毛髪混入って他の工場ではそんなに困っているのですか? うちではほとんど出ないのですが・・・」と驚いておられました。工場に入る前に肘まで手洗いをしているので肘から先に抜け毛の付着がなく、毛髪混入が起きにくいのかも知れません。

流通からは「うで毛の混入を防ぐ処置」を求められます。その結果、長袖の作業服以外あり得ない雰囲気もあります。半袖に今更替えることは難しいかも知れません。もし半袖にしてどれだけ毛髪混入が減るか実験された工場がありましたら、ぜひその結果を教えてください。

図14 肘から先に粘着ローラーを転がさない人は多い

写真3 食品の近くで作業する部分は肘から先

二人で粘着ローラーがけする場合のポイント

二人で互いに粘着ローラーをかけた方が確実に効果があると思っていませんか? 二人でかけてもやり方が間違っていると、効果は上がりません。

海外の工場を訪れると、入口に粘着ローラーがけ担当の門番がいます。この門番はずっと入口にいて、手指のチェックをし、身だしなみもチェックし、帽子のてっぺんから足の先まで粘着ローラーをかけてくれます。しかし日本国内の工場で、このような門番を置くことは難しいでしょう。

せっかく二人でやっているのなら、できるだけ効果が上がるようにしたいところです。

二人で行う粘着ローラーがけの失敗ポイント

せっかく相対でかけても、効果が無ければ意味がありません。二人で粘着ローラーがけをする場合、失敗するのは次のパターンです。

  • 人によって粘着ローラーをかける範囲が異なる。
  • 動いている人に対して粘着ローラーを当てている。
  • 粘着ローラーをかけてあげる人が、相手の作業服をつまんでシワを伸ばしている。

人によって粘着ローラーをかける範囲が異なる

ある人は背中と腰に粘着ローラーをかけてあげています。ある人は帽子の後ろから背中、腰にまでかけてあげています。

帽子の後ろまでかけるのが普通と思ってしまった人は、自分で自分の体に粘着ローラーをかける時、帽子の後ろはかけなくなります。そしてその人にかけてあげる人が背中と腰しか粘着ローラーを当てない人だったら、帽子の後ろに粘着ローラーが当たっていないことになります。

相手にかけるのはどの範囲なのか、図示するなどして範囲を明確に示しましょう。

動いている人に対して粘着ローラーを当てている

自分自身に粘着ローラーがけをしている最中の人に、後ろから粘着ローラーを当てているパターンです。

確かに相対で粘着ローラーがけしていますが、相手が動いているのできちんと粘着ローラーが当たっていません。シワが寄ったところにもおかまいなしに粘着ローラーを当てているので、粘着ローラーをかけている意味がほぼありません。

自分にかけた粘着ローラーを相手に渡し、渡した粘着ローラーでかけてもらうようにしましょう。

粘着ローラーをかけてあげる人が、相手の作業服をつまんでシワを伸ばしている

シワを伸ばしながら粘着ローラーがけしているのは、意識が高いことがうかがい知れます。しかし、粘着ローラーをかけてあげる方が服をつまんでシワを伸ばしていると、つまんでいる部分にローラーがかかりません。つまんだところにも後で粘着ローラーを転がせば良いのですが、そこまでやる人はまれです。

粘着ローラーをかけてもらっている人が自分の服のシワを伸ばすようにしましょう。

ただ漫然と二人で粘着ローラーをかけるように変更したところで、毛髪混入が減るわけではありません。一人でかける場合も、二人でかける場合も、かけ残しが無いように転がさなければ毛髪混入は減りません。

終わりに

毛髪混入防止対策はあれこれ言われていますが、結局は粘着ローラーがけを全員正しく丁寧に行っているかどうかに尽きます。お申し出いただけるかどうかにかかわらず、粘着ローラーがけがスカスカの工場では毛髪混入が多発しています。

粘着ローラーがけをやっていない食品工場はないでしょうが、粘着ローラーがけが雑ならば気休めにしかなりません。全員が正しく丁寧に粘着ローラーがけできているかどうか、工場入口でカメラを構えて録画し、現状把握をしてみてはいかがでしょうか。

粘着ローラーがけの動画マニュアル

動画マニュアルの参考動画は(https://haccp.ne.jp/)をご覧ください。お問い合わせもこちらのHPからどうぞ。

1年後には8割減 食品への毛髪混入の減らし方(前編)はこちらから

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