HACCP、新たな展開に向けて 食品営業自動車におけるHACCPの実情【食品と科学】

HACCP、新たな展開に向けて 食品営業自動車におけるHACCPの実情【食品と科学】

一般社団法人 食品品質プロフェッショナルズ会員の高瀬波佐人が執筆した記事が、食品と科学 2016年5月号に掲載されました。月刊 食品と科学様の許可を得て、公開しております。

冒頭紹介

日本でHACCPが認知されるようになったのは、厚生労働省の承認基準に基づいた衛生管理を行っている事業者に認証を与える総合衛生管理製造過程(いわゆる丸総、日本版HACCP)が導入されてからのことである。この制度の目的は、営業者がHACCPの考え方に基づいて自ら設定した食品の製造又は加工の方法及びその衛生管理の方法について、厚生労働大臣が承認基準に適合することを個別に確認するもので、食品衛生法第11条第1項に基づく画一的な製造又は加工の方法の基準によらず、工程の各段階において安全性に配慮した多様な方法により食品を製造することを可能にすることであった。

平たく言えば、「国が製造条件、加工条件をきめるのではなく、事業者さんで条件をきめていいですよ、しかしながらその条件はきちんと評価し、妥当性確認、検証方法などの資料は指定の書式で提出し、承認を受けてくださいね。ただし、一度きめた条件は変えられませんよ。変えるときはまた同じようにたくさんの書類を提出して承認を受けてね」というものであった。これをみた多くの事業者が、HACCPが非常にややこしく、面倒くさく、お金がかかるものと考え、大企業だけがこのようなシステムの構築に耐えうるもの(構築のためのコストが莫大で費用対効果が全く望めない)で、自分(中小零細食品事業主)にはまったく関係ないものという誤った認識を植えつけてしまったのである。

この現状を何とか打開し、HACCP(Codex準拠のいわゆる本来のHACCP)が真に食品安全確保の仕組みとして有効であり、なおかつ簡単にお金をかけないで実践できるのではないかと、行政を含め、各方面でキャンペーンやアクション策定がなされていているところである。しかしながら、このようなキャンペーン活動等で果たしてHACCPが中小零細の食品営業業界に浸透していく可能性はあるのであろうか? その可能性を探るべく、現実の食品営業の実情を行政の許認可とそれに呼応してやらなければならないこと、及びその実務中にどのようにHACCPを組み込んでいけるのか、考察していきたいと思う。

実際の食品営業例としてキッチンカー(移動営業、販売)をもとに、まずは許認可について調査した。キッチンカーによる移動営業はご存じのように、車両等で目的地まで移動し、そこで飲食物を提供する営業形態を言うが、食品衛生法上以下(表)のように分類される。

ここでは営業車内で簡単な調理を行う食品営業自動車について検討していく。

営業の前提として、食品衛生法または東京都食品製造業等取締条例に基づく営業許可を受ける必要がある。また、営業車以外で仕込み等行う場合は別途営業許可の申請が必要であり、それぞれ申請後所轄の保健所の立ち会い検査を受けることとなる。

営業許可のポイントは、運転席と調理場の仕切りがキチンとされているか、給水タンクの容量は適切か、シンクの数、手洗い石鹸の有無、換気方法などなどで要求事項は多岐にわたる。また、管轄の保健所によって要求事項場微妙に変わってくるので、所轄の保健所とは密にコミュニケーションをとっていく必要がある。

この後、もろもろの手続きを経て営業許可をもらい、営業活動を開始するわけであるが、移動販売先の自治体によってはそこで食品衛生の要求事項を満たさない、またはオーバースペックの状態で営業を行うという事態が発生することもあるのである。

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