包材のポジティブリスト化は、食品衛生法の一部改正に伴い、HACCPの制度化と同様、食品業界から注目されている改正点の一つです。
月刊アイソスで2019年10月から連載されている「包材のポジティブリスト化 食品に関連する産業全体へのインパクト」に、一般社団法人 食品品質プロフェッショナルズ会員が執筆した記事が掲載されました。
月刊アイソス 2019年10月号 執筆 / 渡辺 寛(当協会 社内監事)
冒頭紹介
はじめに
食品用容器包装に関わる世界的な問題として記憶に残っているものにセミカルバジド問題があります。これは、2003年7月に欧州食品安全機構(EFSA)が瓶詰め食品(ベビーフード、果汁、ジャム等)から微量のセミカルバジド(SEM)が検出されたと報告したことに端を発しました。当時、私は外資系食品会社の日本法人で食品関連法規に関わる仕事を担当しており、EFSAの報告が公表されると直ちに本社から各国の担当者に容器包装の法規制について問い合わせがありました。日本の法規制や業界の自主規制を英文資料に取りまとめるのに苦労したことが思い出されます。
瓶詰め食品から微量のSEMが検出された原因は、金属フタについているプラスチック製ガスケット(パッキン)を製造する際の原料であるアゾジカルボンアミドからSEMが生成して、これが食品中に溶出したためであったことから、品質保証部門は当時製造していた缶入り清涼飲料水や乳製品の金属フタのメーカーに対して、使用されているパッキンの原料について調査を依頼しました。しかしながらパッキンの原料に関する情報をキャップメーカーが十分に把握できていなかったためか、金属フタのメーカーからの報告書を受け取るまでに時間を要し、トレーサビリティにおけるネガティブリスト制度の問題を実感しました。
それから15年後の2018年、厚生労働省は「食品衛生法の一部改正(2018年6月13日告示)」によりネガティブリスト制度からポジティブリスト制度に大きく舵を切りました。
今号では現行の日欧米における食品用容器・容器包装の法規制及び食品衛生法改正で導入されるポジティブリスト制度の概要について述べ、食品メーカーとしての対応のヒントについて述べます。
日本における法規制等の概要
皆さんは「器具」や「容器包装」の定義をご存知でしょうか。多くの方は食品衛生法の条文を読む機会は少ないと思いますが、食品衛生法第4条で以下のように定義されています。(図表1)
器具とは、飲食器、割ぽう具、その他の食品又は添加物の採取、製造、加工、調理、貯蔵、運搬、陳列、授受又は摂取の用に供され、かつ、食品又は添加物に直接接触する機械、器具その他の物をいう。
容器包装とは、食品又は添加物を入れ、又は包んでいる物で、食品又は添加物を授受する場合そのままで引き渡すものをいう。
国内メーカーの器具や容器包装であれば食品衛生法上の問題はまずないと思われますが、海外から食品製造用機械などを自社で輸入する場合は食品と接するパーツをすべて把握して「器具」として食品検疫をパスしなければならないので注意が必要です。
次に、器具・容器包装に関する規定についてですが、まず、食品衛生法の第1章「総則」の第3条で、器具・容器包装を製造・輸入・販売する事業者は自らの責任で安全性を確保することが求められています。
さらに、食品衛生法の第3章「器具及び容器包装」で下記が規定されています。
- 第15条「営業上使用する器具及び容器包装の取扱原則」
- 第16条「有毒有害な器具及び容器包装の販売等の禁止」
- 第17条「特定の器具等の販売等の禁止」
- 第18条「器具又は容器包装の規格・基準の制定」
これらの条文の内容を要約すると、「使用する器具・容器包装は清潔で衛生的でなければならず、有害・有毒な物質が含まれるなどの人の健康を損なうおそれがあるものは販売してはならず、安全に懸念があるものは行政が販売等を禁止することができ、規格・基準に合わないものは販売・使用が禁止される」というのものです(図表2)。
つづきはこちらからダウンロード
包材のポジティブリスト化 連載記事
- 日欧米における食品用器具及び容器包装の法規制 日本のポジティブリスト制度化の概要と対応のヒント
- 衛生プロバイダーから見た包材ポジティブリスト化への対応 ~成分分析と衛生監査~
- 小売りの立場から包材のポジティブリスト化への対応として考えられること
- 包材のポジティブリスト化に対し、特に小売業界での対応について
- 中小の食品製造業者を指導する立場から 見えるものについて