飲食(RTE) HACCPの迷路で悩んでますね すべての飲食にかかわる方々へ

飲食(RTE) HACCPの迷路で悩んでますね すべての飲食にかかわる方々へ

日本のHACCP教育を30年間見続けていて 「これじゃだめだ!」と自ら研修団体を立ち上げた広田が教えます。もやもやとした霧が晴れ、すっきりと道筋が見えてきます。

HACCP手引書という悲劇

飲食(RTE)むけのHACCP手引書は かなりの数上梓されていますが どれといってしっくりとあてはまるものがないという感想を持たれてはいませんか? 私自身も 手引書全部を眺めながら これじゃあ使うひとがかわいそうと 嘆いています。

なぜこんなことになるのかといいますと 手順書類は3種の温度管理をCCPとしていればまだ上出来のほうで 危害要因はなんであれ ひたすら その3種の温度管理をやっていれば 問題は起きないといった荒唐無稽な筋書きとなっているからです。

飲食店が提供する料理の3種の温度管理

飲食の場合 加熱殺菌よりも交差汚染防止のほうが重要であるという事がよくあります。また 日本の食事の場合 工程が複雑で かつ 味覚が繊細で 熟成というプロセスを意図的に組み入れているものが多く そこでは3種の温度管理が全く当てはまらないばかりか 下手をすればこの熟成が危害要因の増幅要因となってしまうのです。

そこで 私たち一般社団法人 食品品質プロフェッショナルズでは 現実に基づいた かつ効果の上がる衛生管理を可能にするべく 「手順書」を発行してきています。ここにあるのはその一例「焼き鳥屋向けの手順書」です

まずは 何がやばいのかを探る

私たちがよく推奨することですが、まず Google して その業態でよく起きている食中毒事件を洗い出してもらいます。事件が多く起きているのであれば その事件を引き起こしている原因菌に注意を向け その対策に傾注するべきですので。

漠然と3種の温度管理などといっているのではなく 今まさにそこにある危機に集中するのがベストではありませんか。

焼き鳥屋の食中毒事例は (大阪市の事例をひけば)この顕微鏡写真に写っているカンピロバクター一色です。それも 大阪市内の行政指導件数30のうち14を占めるという高頻度です。

こんな場合 ほかのことをいろいろ詮議している間があったら まずカンピロバクター対策をこそ当面の課題とするべきでしょう。以前 カンピロバクターによる症状は比較的マイルドといわれていましたが そういった古き良き時代はとっくに過ぎ去り カンピロバクター食中毒は ギランバレー症候群の引き金となると明言されているのですから。

ギランバレー症候群

末梢神経(運動神経、感覚神経、自律神経)に障害が出て、手足に力が入らなくなったり、顔、呼吸器が麻痺する病気

決定樹で 管理手段の「決定」を

決定樹に従うと 焼き鳥屋でカンピロバクター事例は頻発し その重篤度が高いため 徹底した管理が求められるといえます。しかし この徹底した管理というのは 鶏肉が透明性を失い わずかに白色に変わったくらいの加熱でいいのですから 割と簡単です。75℃ 1分までの熱をかける必要はありません。

衛生管理計画は まず 重要な危害要因を調理工程で抑え込んでから

このように調理工程で抑えるべきことを抑え その外郭を埋めていく形で 衛生管理計画を設営していきます。CCPとPRPがお互いに助け合っているのですから 強固な防御が出来上がっていきます。

コロナだって HACCPで

次いで話は HACCPをコロナ対策にまで延伸していこうという部分に移っていきます。もともとHACCPは危害要因管理のためのシステムなのですから 食中毒以外であっても何ら困難はありません。

今 社会では 都市伝説のように 飛沫だの 5ミクロンだの アルコール消毒だの マスクだの 2メーターのディスタンスだのと言われています。まるで おぞましいコロナの呪いを避けるためには あの この それから あれも これも おまじないが必要と説明され それに唯々諾々としたがっているというのが実情ではないでしょうか。

しかしながら 現在採用されている対策群は どうしても見た目にアピールするものに集中しがちな傾向を持っているようです。そして 大きなポイントは 私たちが教え込まれている おまじないは 飛沫は5ミクロン以上であれば すぐに落下するから おまじないは効くのだ という前提に立っているのです。

私たちの口から出てくる飛沫は 実際は広い分布を持っている

下図は 普通にしゃべるとき と 咳をしたときの飛沫のサイズの分布が表されています。

ゼロから10ミクロンに一つのピーク、100ミクロンから1000ミクロンにもう一つのピークがあり この大きいサイズのピークは咳をした場合に顕著に表れてきます。

つまり 咳をしたときに飛び散る飛沫は 5ミクロンなどではなく はるかに大きな巨大飛沫ともいえるものなのです。

飛沫は 5ミクロン程度では落下しない

ストークスの沈降式というのがありまして 空気中を落下する飛沫の速度の推定ができます。 一秒間で2.4メーターほども急速に落下するためには 飛沫の直径は580ミクロンもなければならないのです。

水滴が1秒後にどのくらい落下するかをストークの沈降式を用いて計算した図
計算式はこちらのサイトから

つまり 私たちが 人と人の距離は2メーターあれば十分 それだけあれば 5ミクロンより大きい飛沫は全部床に落ちてしまう と教え込まれているのは まったくの誤謬ということになります。

飛沫の直径が100ミクロンにまで小さくなっても 落下速度は1秒間に24センチメーターでしかありません。5ミクロンだと 一秒間に1ミリも落下せず 空中を浮遊し続けるのです。

ここまで来ますと 賢明な読者の皆様はすでにお気づきになっているでしょう・・・ 飛沫のサイズの定義は根本から見直さねばならず 私たちが一生懸命 人と人の距離をあけたり 席を離したり テーブルを離したり いろいろやってますが それは 咳込んだ あるいは くしゃみをした場合の巨大飛沫に対しては ある程度有効なのですが 通常の会話で出てくる100ミクロン未満の小さな飛沫に対しては全くといって無力なのです。

これ以上についてはセミナー会場でお話ししましょう。セミナーの中では 皆さんに 本当に有効な対策は何なのか 明確な答えを差し上げます

文責 一般社団法人 食品品質プロフェッショナルズ
代表理事 広田鉄磨


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