一般社団法人 食品品質プロフェッショナルズ代表理事の広田鉄磨が執筆した記事が、食品と科学 2020年12月号に掲載されました。月刊 食品と科学様の許可を得て、公開しております。
目次
本文紹介
飲食店を想定した日常的な新型コロナウイルス肺炎感染症対策
広田鉄磨
Hirota Tetsuma
(一般社団法人 食品品質プロフェッショナルズ 代表理事)
はじめに
まず以前、 本誌8月号に寄稿した前稿 「公共施設および利用者のための日常的なCOVID-19対策」 では 「5μより大きいものを飛沫、 5μ以下のものを飛沫核」 という科学的根拠のない説に私自身が染まってしまっており、 「飛沫であればすぐに沈降するので2mのディスタンスがあれば十分」 といったミスリーディングな解説をしてしまったことを深くお詫びしたい。 中国ではエアコンを介しての空気感染があったとニュースになったころにでも、 この飛沫サイズの定義上の矛盾に気づけばよかったのだが、 (今回感染症対策セミナー開催に向けて文献類を渉猟するまでは) 私自身が迷信にどっぷりとつかってしまっていた。 今回反省を込めて、 飲食店向けとして仕切り直した寄稿を行い読者の評価を仰ぎたいと思う。
Withコロナという造語も生まれ、 これからは慎重ではありながらも、 負担の重すぎない形で新型コロナウイルスと共存をしていくことになる。 つまり、 コロナが常態化した環境下で効果があり、 しかし社会的負担の少ない衛生管理方法を開発していくことが必要となる。 一時期のように、 コロナ患者が出たとなると建物を封鎖し、 全身防御の物々しいいでたちの消毒担当者が薬剤のスプレーを天井、 壁から床までびしょびしょになるほどまき散らすといった特殊対応ではなく、 日ごろの業務のなかに自然に取り込まれた除染工程をもって (発症していないまたは発症してもまだ症状が顕著ではない) 「ステルス」 感染者がまき散らしたかもしれないウイルスで汚染されているかもしれない空間や部位に集中した対策を取っていくことになる。
現在 (顕在的なあるいは潜在しているが感染力を持つ 「ステルス」 型) 新型コロナ肺炎患者は、 夜の街であっても最高で1千人に1人、 通常であれば1万人に1人未満程度の希薄な密度で存在していると思われる。 これが意味することは、 感染病棟での対応のような明らかにここには患者が多数いるということを前提としたのでは過剰投資となるということである。 1万分の1未満での低い密度の患者の存在であった場合、 感染リスクは Likely to Occur をはるかに下回り Unlikely to Occur の水準にあるといってもいいからである。 外食であろうが、 通勤電車であろうが、 レジャー施設の中での娯楽であろうが、 コロナ肺炎感染リスクに関していえば大差はなく、 外食を必要以上に危険視する必要はさらさらないことが理解してもらえると思う。
すでに上梓されているガイドライン類は、 すべて新型コロナ肺炎が社会的なパニックを引き起こすような特殊事例であったころに作り上げられたものであって、 今後のWithコロナのような日常的な状況には応用しがたい。 この文書はいかに日常生活にコロナ対策を溶け込ませていくかの提言を主たる目的としている。 読者の容易な理解のため、 飲食店を想定舞台として、 我々がとっていくべき対策の解説を行っていきたい。
どこをどのように除染すべきかの検討
室内に存在するものすべてを消毒の対象としたような特殊作業の時期は去り、 明らかに発熱している・咳をしている客は入店を許されないのでさらに患者の密度は下がり、 (店側から見て検知できない) 少数のステルス型患者が埋設したかもしれない汚染が対象となっていく。 つまりは、 目に見えない敵の攻撃を予想し、 防御の弱い部分を洗い出し (脆弱点分析)、 そこに効果は高いが実施にあたって負担の少ない管理手段を導入することで、 クラスター的な感染発生の可能性の芽を費用対効果の高い方法で事前に摘んでいくという方向に軸足を移すべきということになる。 希薄な密度で存在する潜在的危害要因の中から、 顕在化する可能性が他よりも高いものを適切に抽出し、 それに対する管理手段を設営していくというプロセスは、 まさにHACCPそのものであって、 HACCPに通暁している者であれば簡単にやってのけるであろう。
感染経路は以下のようなルートとなる。 感染経路にはその寄与度に応じて (★★★大規模感染経路、 ★★中規模感染経路、 ★小規模感染経路) ★を配置した。
飛沫感染★★★
飛沫とは5μを超えるサイズの水滴であるといまだに巷間で流布されているが、 どう考えても実際に空中を降下するためにはそれをはるかに超えるサイズであることが必要である。
ストークスの沈降式をもって計算してみると、 空中で秒速2mを超える沈降速度を示すためには、 飛沫の直径は580μを超えることが必要となる。 そのため、 この文章中では沈降する飛沫といえば、 目に見えるほどのサイズのものと改めて定義しなおす。 速やかに床に落下することを期待するのであれば580μ、 口から吐き出した飛沫が対面する相手の鼻より低い位置まで落下するだけを望むのであれば100μを超えるサイズであることが必要となる。 他の論文を広げてみても、 実験結果はこの定義を支持しており、 現在巷間で流布されている5μが飛沫と飛沫核の境界説には 科学的な根拠のないことが歴然としてくる。
空中で明白に沈降するような大きな飛沫 (580μを超える水滴) であった場合、 人と人の間の距離を確保することで割合に簡単に防御が成立する。 しかしながら、 患者が一定時間滞在した狭いかつ密閉に近い空間 (例トイレ、 宴会用個室、 パーテーションで囲まれたカウンター席・グループ席など)、 または密集することを甘受する傾向のある空間 (店がある階まで通うエレベーター内など) では、 ついさっきまで患者が呼吸していたあるいはいままさに隣で呼吸しているわけであるから空気中には多くの飛沫 (100μ未満) が浮遊しつづけているはずである。
一般社団法人 室内環境学会の推定では、 飛沫の粒形分布は前述のようになり、 Somsen GA, et al. small droplet aerosols in poorly ventilated spaces and sars-cov-2 transmission. lancet respir med. may 27, 2020. https : //doi.org/10.1016/s2213-2600(20)30245-9. でも、 ふた山構造は共通している。
とくに10μ未満の飛沫はほとんど瞬時に乾燥して、 これ以上の乾燥は難しいところまでサイズが収縮し (つまり塩類や唾液中のタンパク質などを濃厚に含んだ微小な飛沫となり)、 永遠といっていいほどの浮遊を続けることになる。 飛沫感染といえばこれまでは5μ以上のものが主たるキャリアーであり、 それは2m以上の間隔を置けば全部床に落下してしまう、 またパーテーションを置けばそこで捕捉できると信じられていた。 が、 そういった迷信は全面的に払拭し、 今後は飛沫の多くは沈降せず浮遊していることを強く自覚しなければ対策の有効性は確保できない。
たとえて言えば、 今までは飛沫の弾丸が飛んでくるからそれをマスクやパーティションで受け止め、 ほかの人を感染させないように、 ほかの人から感染させられないように防御すればいいと防弾チョッキのようなコンセプトで防御していたのが、 今後は飛沫のほとんどは毒ガスのようなものであって、 マスクやパーテーションでは防ぎきれない、 風の流れに乗って防御の裏側にまで容易に回ってくる…と発想の転換を促す必要がある。 マスクやパーテーションには、 対策していることを部外者に対してビジュアルにアピールできるという “Show” としてのメリットはあるかもしれないが、 特に数μ~サブμの微小飛沫についての抑止効果は全くと言っていいほど期待できない。
WHOの表で Initial FiltrationEfficiency (%) と定義されているのが、 理想的な装着状態での装着直後のマスクの微小粒子阻止率である。 我々が通常着用しているポリプロピレン製マスクではわずか6%しか阻止できないことが明白で、 ハンカチや綿の布地をマスクに縫い上げたようなものであった場合、 阻止率は1%程度にまで落ちてしまう。
トイレ、 宴会用個室、 パーテーションで囲まれたカウンター席・グループ席など、 または密集することを甘受する傾向のある空間 (店がある階まで通うエレベーター) には、 実際のところ換気の強化くらいしか有効な対策はない。 積極的に新鮮な外気を導入する、 それができないところではHEPAあるいは (HEPAではエアコンがオーバーヒートしかねない場所では) 中性能フィルターで、 1回ごとの濾過能力は100%に届かずとも、 繰り返し濾過することで、 100%に近い効果を上げていくことを目指すべきであろう。
接触型様感染★
本来接触感染とは、 医学用語でいえば患者の体液に直接あるいは器具を介して濃厚に暴露されることで起きる感染をいう。 今回のコロナウイルスでは (患者と密接することが避けられない医療関係者以外では)、 接触感染は大きな役割を果たしてはいない。 しかし、 いつの間にか私たちの頭の中では、 患者であろうが健常者であろうが誰かが触ったものはすべてウイルスに汚染されてしまっているかのような印象が形成されてしまったようだ。 そのため、 本当の寄与率よりは高い★として、 あえて定義し、 読者の不安には応えようと思う。 本来の意味の接触感染ではなく、 心理的な不安によって引き起こされた、 実態をあまり伴わない虚像に近い経路であるため、 あえて接触型様感染という造語で対応している。
どれだけの接触型様感染が起きているかといえば、 通常手からモノ、 モノから手と転写されていく転写率は、 軽いタッチであれば数パーセント未満でしかなく、 転写のたびにウイルスの数は激減していく。 新型コロナ肺炎感染には、 1万個程度のウイルスが必要と言われ、 これだけの数以上のウイルスが手指に移され、 そこから1万個を超えるウイルスがさらには上気道に入っていくということは非常に考えづらいので、 対策の費用対効果という面ではほとんどうまみのないものとなる。
食品は上気道ではなく消化器官に入り込んでいく。 新型コロナ肺炎ウイルスはまず上気道にすみ着くのであって、 食品の入っていく経路とは全く異なる。
机、 椅子やソファーなど、 患者が長く滞在した空間に置かれていた調度類もまた患者の飛沫を堆積させている可能性がある。 患者が去った後、 例えばそのソファーに触った健常者がその手指を鼻腔に持ってくれば、 理屈の上では接触型様感染を引き起こしうることになる。 しかし、 ソファーが布地であった場合には、 布地と手との間の接触面積は限定されているため (布地は繊維を編み込んだものであって、 編み込まれた繊維と繊維の間には隙間が多く、 実際にはあまり手指とは直接には接触しない) 単なる懸念でしかない場合が多いとは思われる。 しかし、 心理的な不安に応えるため、 対策の項に言及しておく。 また、 布地のソファーに飛沫が堆積し、 その飛沫の水分が蒸発減量して、 ウイルスがむき出しに近い状態になった折に、 ソファーをこする例えばソファーに座るとすれば、 自分の尻でソファー表面をこすることになり、 舞い上がったウイルスによる空気感染様感染も考えられなくはない (発症に必要なウイルスの個体数は1万くらいといわれているため)。 この空気感染様感染が患者数に大きく貢献しているとは考えづらいが、 懸念を表明する方々も多いので、 心理的な不安に応えるため対策の項には言及しておく。
使用可能な除染剤
厚生労働省が80℃、 10分の熱水殺菌を1つの手段として挙げてはいるが、 飲食店で熱水殺菌を採用できる場面は皆無といっていいだろう。 熱水式食洗器を使用するので食器類の殺菌には使えるのではないかという反論もあるかもしれないが、 コロナウイルスは人間の上気道を寄生部位としているのであって、 消化系に入り込んでも無害でしかない。 また、 食洗器で食器を洗うのであれば、 洗剤やリンス水でコロナウイルスはすでに希釈されており、 熱殺菌を待つまでもなく発症に必要な個体数を下回っているのが通常である。
CDC (米国疾病予防管理センター) の Cleaning and Disinfectionfor Community Facilities (https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/community/organizations/cleaning-disinfection.html) では、 公共設備の除染には (高濃度エタノールや次亜塩素酸ソーダ以外にも) EPA (米国環境保護庁) によってリストアップされたほかの殺菌剤を使っても構わないとしてはいるが、 そのリストの中には簡単にスーパーマーケットやドラッグストアで購入できるものはなく、 今後のコロナ対策の常態化を考慮すると、 やはり高濃度エタノールと塩素系殺菌剤が主流であり続けることは避けられないだろう。
コロナウイルスの無毒化について、 30秒以内かつ5D以上の達成を瞬時に無毒化できたことの証左とするならば、 カンプらによれば高濃度エタノールのみがその効果を確認されたものとなる。 CDCは1千ppmの次亜塩素酸ソーダ溶液を推奨しているが、 そこにはCOVID-19についての検証はなく 過去に似た構造のウイルスにも効いたので、 コロナウイルスにも当然効くはずという推定ベースが裏にある。 厚生労働法の推奨する500ppmの次亜塩素酸ソーダ溶液に関していえば、 過去の衛生指導で採用されてきた濃度の単なる準用でしかない。
望ましくは高濃度エタノールで殺菌する、 高濃度エタノールが採用できない環境下では塩素系殺菌剤の選択となるという構図には変化が起きないだろう。 しかし、 塩素系殺菌剤を採用するにしても、 瞬時にウイルスを無毒化できるほどの濃度では、 その酸化力はかなりのものとなり変色、 腐食しやすいマテリアルには使用できないというジレンマを抱え込むことになる。 (高濃度エタノールでも皮膚障害が報告されているが) 次亜塩素酸ソーダでいえば、 皮膚障害を起こさないためには200ppm程度までの濃度が推奨されており、 そのような濃度のものを除染に使用する場合には、 あらかじめ対象物の表面の有機物を取り除いておくなどの下処理を必要とすることになる。 下処理によってウイルスの個体数が少なかったところに、 補助的に次亜塩素酸ソーダ殺菌を追加することで、 さらなる個体数の削減を図るという 「2段構え」 ともいうべき対策となっていく。
北里大学から洗剤によるCOVID-19の不活性化の報告もあったが、 接触時間は1分以上であって、 衣服の洗濯時間中の不活性化や布きんのつけ置き洗い中の不活性化は十分に期待できるものの、 手洗いという短時間では、 有意な水準での除染は困難といわざるを得ない。
難点はやはり飛沫への直接薬剤使用であって、 狭い空間 (例トイレ、 宴会用個室、 パーテーションで囲まれたカウンター席・グループ席など) または密集が常態化している空間 (エレベーター内など) では、 塩素系殺菌剤も呼吸器に障害を起こさない濃度での噴霧ではウイルスの無毒化を期待しえない。 また、 狭い空間では火災を引き起こしやすく、 エタノール噴霧はご法度といっていい。
こういった狭い空間では使用後、 次の使用までに十分な換気を行って、 ①浮遊しているウイルスを発症閾値以下に希釈してしまう (エレベーターの例で言えば) エレベーターには1人しか乗せず、 その人が降りてからドアを開けた状態で数十秒待機させ、 そののち初めて次の使用者に開放する…といった1利用1除染のプロセスを繰り返していくか、 ②強制的に外気を常時取り入れ、 常に希釈が進行するように運営するか、 ③俯角で45度以上になるように、 常に上から下へ一方向の清浄な空気の流れを生み出し、 浮遊している飛沫が沈降していく速度を加速し、 感染者の発した飛沫が健常者に吸われないようにする、 ④飛沫の積極的な捕集を行い、 健常者が吸い込む空気中のウイルスの数を減少させる (HEPAフィルターの設置あるいは浮遊している飛沫を阻止できるほどのフィルターの設置、 または凝集沈降) のいずれかとなる。
接触型様感染の原因となりかねない患者の手指が触れた箇所の除染は、 方法としては意外と簡単で、 素材がそれに耐えるのであれば高濃度エタノールの噴霧、 1千ppmの次亜塩素酸ソーダ液での清拭を行えば100%に近い除染を瞬時に達成できる。 しかし、 どの部位であったとしても、 人が触ったつどに除染作業を行うことは現実的にはほとんど不可能であって、 念入りな除染作業はやはり終業後とか始業前とか、 利用者がいない時間帯に限定されてしまう。 つまり、 接触型様感染に関しては、 除染方式自体の有効性は高いものの、 実施を利用ごとあるいは施設の稼働時間全体に押し広げることは非常に困難なため、 防御面での穴がたくさん生じることになる。 いくらキャッシュレス化が進んでいるとはいえ相変わらず現金の授受はあるし、 カードの受け渡しもある。 このような支払いツールに対しての高濃度の薬剤での消毒は現実的ではない。
接触型様感染に対しては、 飲食サービス提供側からの対策は穴だらけであり、 やはり利用者一人ひとりに自分の身は自分で守るという心構えを持ってもらい、 自衛のための手洗いと消毒を頻繁に行うことを推奨することのみが防御面での穴を埋めていくものになる。 石鹸を使用して手洗いを行い、 皮脂や汚れを十分に取り除いた後 (同時に多くのウイルスも洗い流されている) であれば、 低濃度エタノールであったとしても、 低濃度塩素系殺菌剤でも、 個体数を発症閾値以下にまで落とすのには支障がない。 現在、 多くの店舗で感染症防止を口実にエアータオルのスイッチが切られているが、 手洗いをしっかりやってもらうためには再度ONにするあるいはペーパータオルという代替え手段を設けるべきであろう。
多くの飛沫は床に落ちていき、 そこで機器の表面や表面に存在する埃に固定された状態となる。 歩き回って靴裏で床をこすってウイルスを大量にくわえ込んだ埃が舞い上がったとしても、 埃にも自重があるためすぐに沈降しはじめ床上50㎝以上にはなかなか舞い上がってこない。 つまり、 床のウイルスは比較的に安全な形で無力化されていると考えてよい。 G Kampf, et al., “Persistenceof coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents.” The Journal of Hospital Infection, doi.org/10.1016/j.jhin.2020.01.022, February, 6, 2020 に示されているように、 コロナウイルスは (床の材質が何であったにしろ) 5日もたてばその上で完全に不活性化してしまうわけだから、 下手に騒がず放っておくというのも最適解の1つである。 一番懸念すべきは、 客がいるにもかかわらず掃除機でこまめに掃除をしてまわることで、 掃除機先端のブラシは床をこすり、 それによって舞い上がったウイルスは掃除機の粗いフィルターを通過し室内にまき散らされることになる。 客が滞在している中での吸引清掃は、 窓を開けるなどして清浄な空気をどんどん取り入れてウイルスの希釈を図ることが必要となる。 窓が開けられない施設では、 掃除機にHEPAフィルターが内蔵されているものあるいはHEPAフィルターがアタッチメントとして取り付け可能なものへの更新が望ましい。 HEPAには対応できない場合、 中性能フィルターでも、 ウイルスをくわえこんだ埃であれば除去できる。
具体的な対策例
感染の経路と店舗で取りうる対策をまとめると表のようになる。 ★の数と☆の数を掛け合わせて大きな数字となるものが、 防止効果と費用対効果のどちらもが高いものということになる。
感染の経路 |
施設・部位の例 |
とりうる対策 |
クラスター感染発生防止効果(★わずかに防止効果あり~★★★高い防止効果あり) |
費用対比(☆:コストx労力の積が大きい~☆☆☆ コストx労力の積が小さい) |
微小飛沫によるもの(空中を浮遊する飛沫) |
狭い空間(例: トイレ、宴会用個室、パーティションで囲まれたカウンター席・グループ席など) または 密集が常態化しやすい空間(エレベーター内など) |
一利用一除染 |
★★★ |
☆ |
積極的な外気の取り入れ |
★★★ |
☆☆☆ |
||
上から下への空気の流れ |
★★★ |
☆ |
||
積極的捕集(浮遊している飛沫を阻止できる程度のフィルターの設置) |
★★★ |
☆☆☆(浮遊している飛沫を阻止するくらいのフィルターをエアコンに組み込むくらいであれば非常に安価) |
||
積極的捕集(凝集沈降) |
★★★ |
☆~☆☆低濃度食塩水であれば安価 |
||
テーブル・椅子の間隔をあける |
★(患者が長時間滞在した場合 部屋の中の空気は全体的に汚染されてしまい 間隔は意味をなさなくなる) |
☆☆☆客の回転率に大きなマイナスを与える |
||
パーティション |
星なし。微小飛沫に対しては抑止効果がないうえ パーティションがあることで換気が阻害されるというマイナス面も出てくる |
☆☆ |
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巨大飛沫によるもの(空中を弾丸のように飛翔する飛沫) |
狭い空間(例: トイレ、宴会用個室、パーティションで囲まれたカウンター席・グループ席など) または 密集が常態化しやすい空間(エレベーター内など) |
テーブル・椅子の間隔をあける |
★(巨大飛沫には有効だが 巨大飛沫の発生場面が実は限定されている) |
☆☆☆客の回転率に大きなマイナスを与える |
パーティション |
★(巨大飛沫には有効だが 巨大飛沫の発生場面が実は限定されている) |
☆☆ |
||
接触型様 |
手指の接触した箇所 |
一利用一除染 |
★(飛沫型に比べて接触型様の寄与度は小さい) |
☆ |
自衛のための定期的な手洗いと消毒 |
★ |
☆☆☆ |
||
接触型・非接触体温計での体温測定 |
★(患者がすべて発熱しているわけではないためごく一部の発熱の顕著な患者の排除としにしか機能しない) |
☆☆(接触型体温計は安価だが測定に人手が必要。非接触型は人手を必要としないが、機器が高価) |
||
その他の経路 |
客に対して(店舗入り口) |
手指のアルコール消毒 |
★(接触型様感染が限定されている以上 手指消毒の貢献度は少ない。また 高濃度アルコール以外では効果が期待薄) |
☆☆ |
マスク着用の強制 |
★(マスクでは微小飛沫を阻止できない) |
☆☆ |
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客・店舗側人員に対して(店内) |
手袋の着用 |
★(接触型様感染が限定されている以上 手袋の貢献は少ない) |
☆☆ |
|
マスク着用の強制 |
★(マスクでは微小飛沫を阻止できない) |
☆☆ |
||
大皿料理の禁止、ビュッフェ料理の禁止 |
星なし。コロナ肺炎ウイルスが経口的な感染を示さない以上 対策には効果を期待できない |
☆☆ |
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トイレ |
エアータオル使用禁止 |
星なし。重症な患者でもない限り糞便中にウイルスは出てこない。可能性の極端に低いものに対策をおこなうより、接触型様感染の防止のためには手洗いの奨励こそ再度強調すべきであろう |
☆☆☆使用再開にコストはかからない。また代替えであるペーパータオル設置にも大きな投資は必要としない |
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客に対して |
5人以上の宴会の禁止 |
星なし。患者の密度が低い現在、境界値が4人であろうが5人であろうが そこにクラスター発生防止効果の有意な差は期待できない |
☆☆☆ルール撤廃にコストはかからない |
おわりに
繰り返しになるが、 これからのコロナ対策は特殊なものであったのでは長続きしない。 カネのかからない、 実行しやすいものであることが第一義となる。 自らの店舗の運営状況をレビューして、 「具体的な実施例」 の中から自分たちにとって適切と感じられる対策を選択していただきたい。 全部やろうなどと気負いこまず、 費用対効果の上がりやすいものに集中することが成功へのカギを握っているものと信じる。