カカオの育成とチョコレート製造<前編>【寄稿】

カカオの育成とチョコレート製造<前編>【寄稿】

(一社)食品品質プロフェッショナルズ 矢野 真理子

 先日、プライベートで1時間程度のチョコレートの学習ツアーに参加する機会があり、チョコレートやカカオについて興味のままに調べてみました。自身で十分理解しているとは言い難いのですが、せっかくなので紹介致します。

 なお、メーカーや業界団体等のチョコレートに関連するホームページと「チョコレート カカオの知識と製造技術」(Stephen T Beckett著、古谷野哲夫 訳、幸書房)を参考にしました。しかし、私の独断と偏見で取捨選択、要約や改変等をしています。参考図書には、製造技術、粘度や流動性、分子構造をはじめ、もう少し広範で詳細、かつ正確な内容がわかりやすく説明されています。

 ちなみに写真は、参加したチョコレートの学習ツアーで撮影させてもらった、室内で生育中のカカオの木です。日本だと寒いのでヒーターで温めているそうで、案内員のお姉さんは、自分が案内員として来たときよりも成長していると仰っておられました。

チョコレートの原料 カカオの生育

 チョコレートの原料となるカカオは、中南米を原産とし、赤道をはさんで北南緯20度以内の適正環境地で栽培されます。カカオの木の樹高は12~15メートル程度と比較的低く、熱帯雨林の低層で生育し、商業的農園では、ココナッツやバナナなどを間に植えて陰をつくることが多いです。カカオの木は多くの病気や害虫に晒されており、カプシッド、黒果病、ウィッチズブルーム、カカオポッドボーラー等があります。

 カカオ豆の香味は生産地域により異なりますが、カカオ豆に含まれる油脂も生産地域によって異なり、一般に木の生育地が赤道に近いほど油脂は固い、つまり融点が高い傾向があります。カカオの木には10万個もの小さな花が、枝や幹に咲き、うち一部が5~6か月程度で、10~35cm(200gから1kg以上)のポッドに成熟します。ポッドの色や形は、品種によって種々で、1個のポッドには30~45粒程度の白いパルプに包まれたカカオ豆が入っています。収穫とともに、カカオ豆はポッドから取り出され、パルプが付着した状態で1週間程度発酵されます。発酵中温度が上昇し、カカオ豆が発芽できなくなるとともに、発酵によってチョコレートの香味成分の前駆体が生成されます。発酵後のカカオ豆は、カビが生えないよう天日で十分に乾燥され(一部地域では熱風乾燥の場合も)、麻袋に詰められて、主に船積みで輸出されます。

チョコレートの原材料となる、カカオマスの製造

 カカオ豆には、砂や植物組織等の異物が付着している可能性があり、マグネットや吸引、風力等によるクリーニングがなされたあと、ロースト、ウィノーイング(シェル(豆の外側の皮)とジャーム(胚)を取り除き、ニブ(胚乳)のみを残します。シェル剥離)、カカオニブの粉砕処理が施され、チョコレートの原材料であるカカオマスとなります。方法により各工程の順序は異なります。ロースト中の高温と乾燥で多くの揮発性物質、特に酢酸が除かれて酸味が減少し、メイラード反応をはじめとした化学変化により特有の色や香味を生じます。粉砕処理は、カカオ粒子を小さくする(これ以降の後工程でも粉砕されます)ことと、胚乳からできるだけ多くの油脂を遊離させるために粉砕が行われます。油脂は細胞内(幅20~30μm)に含まれ、粉砕で細胞を破壊することにより油脂が遊離して粘性が低下します。

2019年4月2日 更新

後編はこちら


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