HACCP、新たな展開に向けて イギリスの事例にみる、外食産業でのHACCP普及のヒント【食品と科学】

HACCP、新たな展開に向けて イギリスの事例にみる、外食産業でのHACCP普及のヒント【食品と科学】

一般社団法人 食品品質プロフェッショナルズ会員の氷川珠恵が執筆した記事が、食品と科学 2016年9月号に掲載されました。月刊 食品と科学様の許可を得て、公開しております。

冒頭紹介

待ったなしのHACCP導入

食品流通の広域化・複雑化などにより、世界中で食中毒等の食品安全リスクはこれまでになく大きくなっている。各国は食品安全レベルを担保するため、HACCPの義務化を進めている。すでにHACCPを義務化しているEUに加え、米国でも本年9月から施行される食品安全強化法においてHACCPをベースとした食品安全管理が義務化される。今や、世界的にHACCPの導入は、食品安全を担保とするための基本ルールとなりつつある。一方、日本ではいまだHACCPの導入率が3割に満たないなど、欧米の状況と大きな隔たりがある。海外から見れば、日本の食品だけが例外的にHACCPなしで安全を担保しているという説明は全く合理的ではない。このままでは日本からの食品輸出に支障が出てくる可能性がある。

また、輸出をしていなければHACCPは関係ないと思われがちであるが、国内においても今後影響が出てくる可能性がある。もっとも懸念される問題は海外から安全ではない食品が流入してくることだ。日本国内ではHACCPを導入していなくても基本的に安全性に問題はないと考えがちだが、海外とはそもそもベースとなる食品安全のレベルが異なる。海外では、HACCPを導入していない工場は、安全を疎かにしている可能性がある。しかし、日本国内でHACCPが義務化していなければ、それを輸入企業にだけ求めることは貿易上出来ない。このような背景から、日本においても、ようやく厚生労働省がHACCPの義務化について検討を始めた。

外食におけるHACCP

上述のように世界的にはHACCPは食品安全を担保するための基本ルールとなっているが、外食産業においてはどうだろうか? 一般にはHACCPは製造ラインを持つ事業者内で取り組まれるシステムと思われがちである。実際、食品製造業に比べれば、世界的に外食産業でのHACCP導入は圧倒的に遅れているといえるだろう。外食店舗の場合、まず一つの厨房で、非常に多くの品目の食品を作るうえ、作る品目が日々変わることも珍しくなく、HACCPの適用は複雑化しがちである。また、非常に限られた人数で作業をしているうえ、働いている人も必ずしも食品安全に関する教育を十分に受けていないことも多く、人の入れ替わりも激しい。外食におけるHACCPの導入は製造業よりも難しいといわれる所以である。たとえば、HACCPを義務化しているEU内においても、ドイツではリスクに応じて食品産業を4つの業態に分類し、それぞれについて必要となるHACCPの適用レベルを区分して運用しているが、外食産業についていえば、基本的には比較的リスクの小さなカテゴリー1またはカテゴリー2が適用され、HACCPの実施までは要求されていない。民間取引における食品安全マネジメントシステムの国際標準を作っている世界的な業界団体であるGFSI(Global Food Safety Initiative)においても、外食を含むケータリングの要求事項はいまだ策定途中である。

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