食品品質プロフェッショナルズ顧問の高橋久仁子教授から、保健機能食品について代表理事である広田鉄磨との意見交換がありました。高橋教授の許可を得て、そのやりとりと、お寄せいただいた「特定保健用食品の存在意義を考える」を公開致します。
目次
高橋教授 → 代表理事 広田
保健機能食品の件
広田様
いつも情報をお送りくださり、感謝申し上げます。日経のトクホシンポジウムの件もありがとうございました。すでに申し込んでおりましたが、阿南さんの招待文を興味深く読みました。
私はトクホというより、保健機能食品全般をきちんと見直さなければ、消費者に対して無責任と考えています。添付ファイルは4月末〆切りで書いた原稿です。そこに書いたとおり、当初はトクホと機能性表示食品を同時に批判する予定でしたが、調べ直してみるとトクホそのものの問題を放置したままでいいのかと改めて考えた次第です。
その後、以前から気になっていた機能性表示食品の、トクホにはない機能性の表示問題として尿酸値に限定してまとめたのが以下です。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74890
明日のシンポはトクホに限定かと存じますが、機能性表示食品という枠組みができている現在、消費者に対して、トクホの立場からは機能性表示食品をどのように説明するのか気になります。まさか、トクホにない機能性は機能性表示食品を使うといいですよ、とはおっしゃらないとは思いますが。
明日〆切で保健機能食品全般を問い直す原稿(←クリックでPDFダウンロード)を書いています。確たる理念があってできた保健機能食品制度ではないため、根拠法令もバラバラ、審査を経たトクホより、機能性表示食品のほうがはるかに強い口調で機能性を表現する等々、私はヘンだと思います。 両記事をご高覧いただければ幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
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高橋久仁子
食品の広告問題研究会
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代表理事 広田 → 高橋教授
Re: 保健機能食品の件
高橋先生
お久しぶりです
拝読いたしました
すでに「尿酸値が高い」人
機能性表示食品の利用対象者は、「病気にかかっていない成人」である。
したがって、人間ドック等での検診で血清尿酸値が7.0mg/dLを超えて「尿酸値が高い」と指摘された人や、すでに高尿酸血症と診断されている人、痛風発作経験のある人は、尿酸値に言及する機能性表示食品の利用を考えてもムダである。
「現状の血清尿酸値は7.0mg/dL以下だが、けっこう高めだから今のうちに何とかしなければ」と考える人だけに、尿酸値言及商品の利用”資格”はある。
しかし、それも冷静に考えたほうがいい。限られた人数の被験者でおこなわれ、「有意差がある」とはいっても、その「効果」は小さいからだ。
医薬品ではなく、食品なのだから、当然のことである。40商品のどれを選ぶか、時間を使って悩み迷うより、アルコール飲料を飲みすぎない、運動不足を解消する、プリン体リッチな食品を食べすぎないなど、基本的な生活習慣の見直しに時間を使うほうが「効果」は大きいかもしれない。
届出表示の「尿酸値が高め」との文言の後ろには「(5.5(または6.0)~7.0mg/dL)」と続くが、これをきちんと読む人がどれだけいるだろうか。「そういえば、『尿酸値が高め』っていわれたな。これでも飲んでみるか」と、安易に利用する人がいないことを願うばかりである。
に 私に気にしている箇所が大きくハイライトされています
- 病人には効かない
- 予防向けとはいえ その傾向もない人には効かない
- 効能治験の信頼性は低い
なんとなく 今から飲んでいけば 将来(それも何十年先)病気にはならないだろうといった 安心希求願望に悪乗りし それどころか 煽り立てているというのが 大きな問題です
そんなに何十年も先が気になるなら そんなもののむより 軽い運動するとか ぐっすり眠るとか 長期にわたった健康の構築・維持をこそまず考えるべきでしょう
先生のメールをそのままに 何でしたら 私のメールもつけて 会のHPに添付も込みで掲載してよろしいでしょうか
広田
冒頭紹介
高橋教授からお寄せいただいた「特定保健用食品の存在意義を考える」の冒頭部分をご紹介します。続きはダウンロードしてご覧ください。
はじめに
保健機能食品は「科学的根拠がある」とのことで、国が定めたルールに基づいて機能性(保健効果)を表示できる食品群である。現在、特定保健用食品(1991年~、トクホと略)、栄養機能食品(2001年~)機能性表示食品(2015年~、FFCと略)の3種類があり、トクホだけは公的機関による個別の審査を要する。
医薬品ではないにもかかわらず健康への何らかの好ましい影響を期待して経口摂取する商品が「健康食品」であり、この中のごく一部が保健機能食品である。保健機能食品以外のこの種の商品はいわゆる「健康食品」と呼ばれ、ありもしない効果をあるかのように言い募ることもあれば、健康被害や経済被害をもたらすこともあり、しばしば問題となる。
これらとは一線を画すはずの保健機能食品にそのような問題はあってはならない。ところが、トクホとFFCにはわずかな効果を大きく見せる広告を展開する商品があり、FFCには怪しげな論文を「科学的根拠」と主張する商品もあるなど、科学を装ったウソ、すなわちニセ科学を疑わせる事例が少なからず紛れ込んでいる。このことを筆者はかねてより批判してきた。
これらとの関連で当初、本稿はトクホとFFCの問題を考えるつもりでいた。しかし、トクホの現状を改めて調べなおすと、今まで見過ごしてきた小さからぬ問題点を確認したため、本稿はトクホだけの検討に変更した。トクホはひとつではなく5種類もあること、表示する機能性や、その機能性に関与する物質などを概説した後、問題事例やトクホ制度への疑問などを紹介し、その存在意義を考えた。
消費者庁ウェブサイト上の情報から知るトクホの現状
トクホは誕生以来、今年(2020年)度で30年目となる。「健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、『おなかの調子を整える』などの表示が許可されている食品。表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可している。」とは消費者庁によるトクホの簡単な説明である。国の審査に合格したので、許可マーク(トクホマーク)をつけて、許可された範囲の機能性を記載し販売できる。
トクホ制度に関する情報は消費者庁のウェブサイトにまとめられており、ここに「トクホ許可品目一覧」がExcelファイルで公開されている。許可を受けた商品の「商品名」や「食品の種類」「関与する成分」「許可を受けた表示内容」「摂取をする上の注意事項」「区分」「許可番号」「H28.9.27時点の販売状況」などが一覧表となっている。これはほぼ月に一度更新される。
本稿で参照した「トクホ許可品目一覧」(許可一覧と略)は2020年4月10日更新版(1,071品目)である。各項目の内容と、各々を調べてわかったことを紹介する。